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概要

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2017 spring vol.29   10奈良にも居場所を 近鉄生駒駅の北側すぐの場所にある「たけまるホール」の調理室を借り、毎月1回開かれているのが、たわわ食堂【こども・居場所食堂】。呼びかけの言葉には「おなかペコペコの子どもたち、一人ご飯・チンご飯に飽きちゃった方、息抜きの必要な方、日本語覚えたての外国人の方など、みんなで楽しく食卓囲みましょう」とある。仕事を持つお母さんと子ども、赤ちゃんづれのお母さん、シングルマザー、シングルファザー、高齢者など、毎回20人から50人が集まってくる。 驚くことに、予約は不要で、そのときになってみないと何人分を作ればいいのかがわからない。おおまかなメニューは考えるものの、ボランティアと参加者の区別もなく一緒になって、差し入れの食材などを生かしながら、「何作ろっか?」「あれが足りないねー、スーパーで買い足してこよう」と、行きあたりばったりともとれる開催のしかたなのだ。実はこれは、外出しづらい人や名乗りでることがハードルだと感じる人でも、ふらりと来てもらいたいという気持ちから。貸し会場ならではの制限時間の中「作って」「食べる」をこなすには、ハプニングもモノともせず、チームプレーで奮闘せざるをえない。その結果、「できた!」という達成感や「おいしいねえ!」という共感があふれ、心の垣根が低くなっていく。 こんな食堂を企画したのは、生駒市在住の溝口まさよさん。10年以上にわたり、私立の保育園が開く児童英語教室で講師をしていたが、三年前、保育士の資格をとるべく一念発起。資格取得のため実習した児童養護施設では、児童に食事を作る「トントントン」という音や、「今夜は何かな?」という匂いを感じてワクワクしてもらうため、オープンキッチンになっているのだと聞いた。温かいご飯、安心して眠れること、自らが勤める保育園に通う子どもたちにとっての「あたりまえ」が満たされない子もいることも知った。忙しい親も、食事の支度を短時間で済ませたくなる。それも、「もうすぐご飯だ…」という期待感を子どもたちから奪うことになるのでは。子育てしながら仕事を持っている溝口さん自身にも思い当たるふしがあった。 「温かいご飯を作ることなら、わたしにもできるかも」と、保育士になった頃に始めたのがこの食堂だ。以来、仕事のかたわら月に一度の活動に精を出す。人見知りな子どもの変化や、しんどさを抱えた大人の安らぎに触れるのが喜びだ。スタートから一年、その日を目指してまた頑張れるような食堂として細く長く続いてほしいと、筆者も思った。(取材・文 阿南セイコ)温かい人の気持ちのおすそわけでお腹も心も満たしあいたい。たわわ食堂【子ども・居場所食堂】たわわ食堂を企画した溝口まさよさん。経済的支援が必要と思われる家庭に、それとなく食材のプレゼントを橋渡しすることもある。子どもの貧困への関心の高まりとともに、全国に広がりをみせている「子ども食堂」が、奈良県内でも増えてきています。筆者が耳にしているだけでも「大和八木こども食堂」(橿原市)、「高の原子ども食堂」「キッズ大宮音読あさごはん」「小草こども食堂」(奈良市)、「こども食堂いかるが」(斑鳩町)そして今回紹介する「たわわ食堂」(生駒市)など。この中から、たわわ食堂の言い出しっぺを自称する溝口まさよさんに、実践者としてのありのままのお話をうかがってみました。次回の開催は4月30 日(日)参加費は大人300 円、子ども100 円、+「お気持ち」。ボランティアや差し入れも募集中。情報はフェイスブックページで公開している( たわわ食堂で検索)。連絡先= 080-1450-2788(溝口さん)左下 今年から取り入れることになった学習支援の和室。