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11  2017 spring vol.29高齢者の現状から 厚労省の「厚生行政基礎調査」によると、1970年ごろから急激に世帯人数が減少し、高齢者のみの世帯や独居が増えている。一人暮らしの世帯では、会話が少なく、特に男性の場合は近所付き合いがほとんどない人が17・4%、また、病気のときや一人ではできない日常生活に必要な作業(電球の交換や庭の手入れなど)を頼れる人がいない人が20%と高くなっている(平成24年度版「高齢者白書」)。これらの状況から、認知症人口や孤独死の数が増える、介護保険制度の維持が難しくなるなどのリクスが高くなるとして、高齢者施策について近年、地域での助け合いの必要性が強調されている。子育て世代の現状から厚労省資料(平成19年)によると、「地域の中での子どもを通じたつきあい」に関しては、4人に一人が相談できる人がいない、4割の人は子どもを預けられる人がいない、半数以上は子どもを叱ってくれる人がいないという。様々な要因により地域の関係が変わり、地域の人たちが周りにいる子どもたちのことを知らない。また、子どもたちの遊ぶ姿もあまり見かけなくなった。障害者支援の現状から 2006 年障害者自立支援法が施行、2013 年には障害者総合支援法が施行され、「地域社会における共生の実現」が新たに盛り込まれた。今までの施策は、当事者とその家族に対して専門的に関わっていく、あるいは障害者やその家族のみの居場所づくりが中心であったが、障害者の地域社会への参加、家族の孤立についてはあまり改善されなかった。新たな地域力の再構築を 地域の関係性を昔に戻すことはできないが、新たな関係性をどのように構築していくかが問われている。公的な施策もいろいろ実施されてはいるが、課題としては縦割り行政の弊害として、多様な地域資源を生かした地域力による関係性の再構築をする視点が弱い。また、基本的には社会の在り方として「専門的な囲いこみ(公助)」「家族による福祉(自助)」から「多様性のある地域づくり(互助・共助)」にシフトし始めている。 以上から、個々人への多様な対応が可能となる小地域単位での拠点となる居場所が求められている。高齢者、子育て世代、障害者の現状から見えてくるもの さまざまな地域やテーマで運営されている「地域の居場所」。住民主体の活動であるがゆえに、どこにどのような活動があるのかについてのまとまった情報は今のところ存在していない。また、運営上の課題は何か、どのように解決したら良いかについて互いに学び合う機会も、奈良県においては皆無に等しい状況だ。 そこで、問題意識を共有する有志によって生まれたのが、「奈良の居場所プロジェクト」。昨年、奈良県下の「地域の居場所」を調査し、情報を収集した冊子を作成するとともに、地域ごとのサポーターの配置、今年1月には、情報交換や課題解決のためのフォーラムが開催された。 同プロジェクトでは、引き続き奈良県内の地域の居場所の啓発と担い手のサポートを目的に、地域サロン等の情報発信や、担い手同士のゆるやかなネットワークづくりを行っている。 事務局の大浦悦子さんは「地域住民によるささやかながらユニークで生き生きとしたサロン活動を支えることが、高齢化が進む地域社会を明るいものに変えていく力になると確信しています」と話す。(取材・文 編集局)【団体基本情報】奈良介護保険研究会・奈良の居場所プロジェクト実行委員会【活動内容】 □ 地域サロン情報誌『奈良の“ 居場所” ナビ』  の発行 □ 奈良の居場所フォーラム2016 の開催  (2017 年1 月15 日実施) □ Web サイト『奈良の居場所』の運営 □ その他、ゆるやかな情報交流等【事務局】大浦 悦子TEL & FAX  0742-94-6805Email naratiikinoibasyo@gmail.comhttp://www.souken-mailbox.com/ibasho/地域の居場所の啓発と担い手のサポートを奈良の居場所プロジェクト奈良の居場所フォーラム奈良の居場所フォーラムでの華厳宗教学部長・東大寺教学執事の上司永照(かみつかさ・えいしょう)氏による基調講演。「一枝の草でも一握りの土でもいいから、一人ひとりの小さな力を集めることが大切」との言葉に多くの共感が集まった。なぜ、今居場所が必要?地域研究会俚志 大浦悦子さとなかつどい場 笑