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17  2017 spring vol.29題。そして、特に施設退所後の生活資金不足などカネの問題。施設では保育士や調理師が全てを行うため、基本的な社会生活がわからないといった情報の問題に大別できます。社会的養護の課題は置き去りになりがち 映画を作っていて、18歳で退所となった施設時代の友人を映しながら感じたのは、将来へつながる機会はできれば等しくあってほしいということでした。たとえば、2016年1月の厚生労働省の調査によると、一般家庭の大学・専門学校への進学率は77%であるのに対して、施設出身者は23%となっています。また、施設出身者の大学中退率は25%となっています。施設のほとんどは社会福祉法人であるため、制度上の問題や運営側の問題もあるかとは思います。ただ、それだけでは決してなく、元当事者が言うのはおこがましいですが、社会全体の問題のうちのひとつだと言えると思います。 2012年、児童養護施設の小学生1 人あたりの職員が世話をする子どもの人数の最低基準が、6人から5・5 人に引き上げられましたが、そうなるまでに32年の月日がかかっています。さらに、平成28年、日本財団の「社会的養護のアウトカムに関する系統的レビュー報告書」によると、結論としては、日本の研究は長期的な予後を追跡したものや施設、里親などの養育環境ごとに比較できる研究が僅少で、海外と比較してエビデンスの質の低さが課題となっている、としています。このことからも、やはり社会的養護に対する社会的な関心の低さが伺えます。上映会に託す思い  映画上映を通じて出逢った方々と話していて感じるのは、このような現状に問題意識を持ってくれる方が少しでも増えれば何か変わるかもしれないということです。2016年3 月29日、児童福祉法等の一部を改正する法律案が閣議決定されました。そこには、施設入所等措置を受けていた者について、18歳到達後も、22歳の年度末まで引き続き必要な支援を受けることができる事業の創設を検討していると記載されています。また、日本財団の調査結果のひとつに、一定以上のエビデンスレベルのある研究から、家庭で養育されている子どもの方がアウトカム(成果)がよいという結果が示唆されたそうで、国は施設の小規模化、里親家庭の増加を推進しています。今後この映画を観て、このような時代もあったのかと驚くような日が、いつかやってくればいいなと感じています。- 寄稿-『チョコレートケーキと法隆寺』監督:向井啓太(2016 / 日本 / 59 分 / 英語字幕付き)なら国際映画祭2016NARA-wave 観客賞The 12th Jeju Film Festival 招待(韓国)第7 回座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル奨励賞ImageForumFesteival 2016 入選自身の生い立ちとともに、今まで公に語られることのなかった児童養護施設での生活や、18 歳になると退所して経済的に自立しなければならない厳しい現実を描く作品は、なら国際映画祭2016NARAwaveで観客賞を受賞、それ以後も口コミによる自主上映会が続々と開催されている。映画の題名は、「甘くて苦い過去」と「生まれ育った故郷への愛着」を表したもの。「里親制度ってなあに?」さとおやミニ講座開催さとおやミニ講座+里親相談会と き:4 月20 日(木)  午前11 時~ 11 時半ところ:奈良市役所中央棟1 階    子育て相談課窓口まで    おこしください内容:里親制度についてや里親の登録~子どもが来るまでの流れなどを、子育て相談課職員がお話しします。