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2017 spring vol.29   04富山県南砺市制度ができる6年も前に、在宅介護支援を開始 井波厚生病院(92年より公立井波総合病院)は、84年に不定期の訪問診療・訪問看護を開始し、翌85年からは定期的な訪問診療、88年からは訪問リハビリテーションもスタートした。そして94年には、院内に在宅介護支援センターを開設した。もちろん、介護保険制度ができる6年も前のことだ。南砺市政策参与(前南砺市民病院長)の南眞司さんは、「制度にないことでも、住民・患者さんのために何ができるかを考えて、必要であれば独自に仕組みをつくってきた」と振り返る。 センターの開設に合わせて、医療ソーシャルワーカーや介護福祉士、言語聴覚士、臨床心理士を順次採用し、介護保険制度の導入に向けてケアマネジャーの養成にも乗り出した。99年には居宅介護支援事業所の認定を受け、訪問看護ステーションも開設。00年には、訪問リハビリテーション部門、訪問介護部門を設置し配食サービスを開始した。02年には地域リハビリテーション広域支援センターに指定され、圏域内のリハビリ実施機関スタッフに対する研修などを行うようになった。 南砺市が誕生したのは04年11月のことだ。公立井波総合病院改め南砺市民病院の位置する井波町など8町村が合併した。富山県南西部に位置し、北部の砺波平野を除いては山間部が8 割を占め、世界遺産に登録されている五箇山の合掌造り集落もある。人口は5万600人ほどで、合併後の12年間で8000人以上減少した。高齢化率は35%を超えている。退院後も含めたケアのためチーム医療を実践 超高齢社会を背景に、南砺市民病院の入院患者も70歳以上が圧倒的に多い。高齢者の代表的な疾患である脳卒中、肺炎、心不全、あるいは骨折などの怪我は、治療しても後遺症が残る場合が多く、退院した後のケアこそが重要になる。そしてそのケアには、市民病院と診療所等の病診連携や病院内の多職種の連携、医療と福祉の連携が不可欠だ。 そこで同病院では、それぞれのスタッフが専門分野を生かして患者を包括的に支えるチーム医療に力を注ぐ。たとえば、嚥下性肺炎プロジェクトチームを結成し、医師、看護師、P T・O T・S T、栄養士、薬剤師、介護士、医療ソーシャルワーカーらが参加。メンバーは絶えずカンファレンスを開きながら、治療、食事指導、口腔ケア、リハビリなどのあり方について症例ごとにきめ細かな対応を続けた。高齢者の居場所づくりの大切さは言うまでもないが、つくるまでもなく最もやすらげる居場所がある。それは住み慣れた自宅だ。富山県南な んと砺市は、市民病院を中心に「病気を治すだけでなく、退院した後も患者とその家族の暮らしを支える医療」を追求。その歴史は古く、合併以前の1980 年代から、市民病院の前身である井波厚生病院が地域包括医療・在宅医療を実践してきた。そこから今に至るまで受け継がれているのは、高齢者を地域の宝と考え、その尊厳を最期まで守ろうとする姿勢だ。自宅こそ居場所。退院してからも続くケアで高齢者の暮らしを支える富山県砺波平野の散居村南砺市南砺市民病院