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09  2017 spring vol.29ムヘルプステーション、ケアプランセンター、グループホーム、訪問看護ステーション、バリアフリーアパート。現在は小規模多機能居宅介護に集約されている。②ネットワーク型…当該地域やその周辺に点在するサービスをつなぎ合わせることで、フルタイム・フルサービスを可能にする。02年開設のサポートセンター関原、同上除などがこのタイプ。③コラボレート型…民間の土地に民間事業者が建物を建設し、社会福祉法人(こぶし園)は介護サービスの提供などのソフト部分に専念する。前述の摂田屋や04年開設のサポートセンター永田などがこのタイプである。大規模な特養はあくまで一時的な避難所 こぶし園は82年に、定員100人の特別養護老人ホームとして市の郊外に開設された。待ち望まれた大規模施設であり、市内外からの入居希望者で定員はすぐに埋まった。しかし小山さんは、当初からこの施設を「避難所のようなもの」と位置づけていた。避難所は災害のとき一時的に身を寄せる場所であり、いずれは自宅に帰る。要介護者も、住み慣れた地域に帰って暮らしたいと願う点は同じだ。 「在宅サービスの整備をまず徹底し、それでも足りない部分を社会のセーフティネットとして施設で補うというのが、介護される側の立場に立った本来的な介護のあり方」と小山さん。したがって、要介護者のニーズを踏まえた、縦割りでない総合的なサービスが在宅を基本にして提供されるべきという考え方――つまり地域包括ケアの考え方そのものが、もとから基本にあったということだ。 「地域包括ケアシステムとは、その人が〃生きている〃地域社会での生活を継続的に支えるために、24時間365日連続する介護と看護、3食365日の配食、そして安心を保障する医療を中核とした包括的なサービスシステムのことを指す」こぶし園の挑戦がサテライト型特養に結実 そして02年から、市街地に順次サポートセンターを整備する取り組みが始まった。当時は小規模特養が認められていなかったが、構造改革特区に申請して採択された。06年にはその事業で建設されたサポートセンター美沢がオープンし、こぶし園の利用者15人が移った。これが、その後に制度化されたサテライト型特養のモデルとなった。 「大規模特養から地域へ帰す」という理念を実現するうえで、もう1つのポイントは利用料金であった。サービスごとに出来高負担の積み上げ方式で計算する従来の制度では、必要なサービスをすべて受けようとしたらあまりに経済的負担が大きすぎる。在宅サービス料金の定額化を、小山さんは強く訴えてきた。 その願いは、06年の介護保険法改正に伴う小規模多機能居宅介護の導入、12年度から始まった定期巡回・随時対応型訪問介護看護によって実現した。サポートセンターの利用料金は、要介護度によって異なるが月額2万5000円前後(室料や食費は別途)である。 また小山さんは、ICTを活用した在宅高齢者の見守りの必要性を説き続けた。その遺志を引き継ぐように、15年10月から「長岡在宅フェニックスネットワーク」が運用されている。在宅で医療・介護の提供を受けている市民の情報を、医療機関・介護事業所・市の救急隊などがタブレット端末などで共有する仕組みだ。 こうしたこぶし園の先進的な取り組みに対して、長岡市は国の補助制度を活用した施設整備費の財政支援などを行ってきた。民間が主体となって走り行政が側面から協力する形で、旧長岡市の全域に地域包括ケアシステムが実現している。1事業者の立場ではなく俯瞰的な視野で、あるべき仕組みを構想・推進できた小山さんがいたからこそだろう。まだ60歳。あまりにも大きな損失だ。子どもを含む地域住民と利用者が日常的に交流(サポートセンター摂田屋)